無尽の意味・仕組みとは？山梨県の金融システムのメリット・トラブルも

山梨県で古くから続く無尽の仕組みについてご存知でしょうか。じつは鎌倉時代から続く日本の金融なのです。昔から日本人の助け合いの精神から無尽が行われました。近代に進むにつれ無尽を行う会社や業法も定められました。現代でも深い繋がりを感じる場として機能しています。そんな無尽についてぜひ知ってみませんか。

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1 無尽の意味・仕組みとは？
2 無尽のメリット・デメリットは？
3 無尽は日本人同士が助け合うための仕組み

無尽の意味・仕組みとは？

無尽の意味とは底なしでものが尽きないこと

無尽の意味とは底なしでものが尽きないことです。無はないこと、尽はつきるという意味がある漢字ですが、大抵のものは有限で限りがあります。理由もなく無尽蔵に何かが起こったり、生まれたりすることはありません。しかし、限りが見えず、底が尽きることがないと思えたときにこの言葉が使われたのではないでしょうか。

例えば無尽蔵という言葉がありますが、尽きることが無い蔵と書きますね。蔵は倉庫ですから、さまざまな物をしまっていたことが想像できると思います。蔵にしまうものといえば財宝ですが、それに例えて仏教用語では尽きることのない徳を持っていることを指した言葉だったそうです。

無尽とは山梨県の日本で最も古い金融の仕組み

無尽とは山梨県の日本で最も古い金融の仕組みです。日本には無尽と呼ばれる、金融の仕組みがありました。無尽が始まったのは鎌倉時代で、村の仲間内でお金を持ち寄って助け合うための仕組みでした。今でも山梨県では習慣で残っていますが、助け合いよりは年寄りや気の合う友達同士で食事会などの楽しむ目的が強いです。

昔はともかく、現代の無尽にはさまざまな形があります。例えば高齢者のコミュニケーションの場や、趣味仲間で集まる会、女子会、飲み会などです。同性同士で集まる場合もあれば、趣味などを通じて幅広い年齢や世代の人が一緒くたに集まることもあるそうです。人の絆が薄れがちな現代では貴重なつながりかもしれません。

無尽の仕組み①みんなでお金を拠出して積み立てて順番に総どりする

無尽の仕組み1つ目は、みんなでお金を拠出して積み立てて順番に総どりするということです。無尽では、1万円などの決まったお金を定期的に持って集まり、積み立てします。そして、集まった人達が順番に積み立てたお金を総取りしていくのです。もらったお金の使い道に特に決まりはなかったようです。

無尽はみんなで助け合い、村の社会を維持するために生まれた制度だと言われています。例えば、昔は作物が育たなければ飢饉が起こったりしますし、急な婚礼や葬儀などで多額のお金が必要になる場合があります。そんなとき、無尽の仕組みで食べ物やお金をみんなで持ち寄って、乗り越えていたのです。

無尽の仕組み②利息を多く払った人が先に受け取ることができる

無尽の仕組み2つ目は、利息を多く払った人が先に受け取ることができるということです。無尽でお金をもらう順序ですが、持参金にプラスアルファで支払う利息額が多い人ほど、先にもらうことができました。しかし、そのときに足した利息額はそのまま、今後の無尽に持参する金額となります。

無尽の利息という仕組み上、必然的に最後にもらう人ほど金額は多くなります。例えば無尽に1万円を持参した5人が集まったとします。その時に1000円の利息をつけ、総取りの権利を見事に得た場合、その回では1万×5人なので5万円もらえます。そして次もらう人は利息付きの5万1000円分もらうことができます。

無尽の仕組み③事業を始めるときの資金の調達手段でもあった

無尽の仕組み3つ目は、事業を始めるときの資金の調達手段でもあったということです。今はビジネスや事業を始めるときは銀行にお金を貸してもらうのが普通です。しかし、昔は無尽でお金を出資してもらう仕組みがありました。また、村内でお金を融通しあうので、すぐに集まるのもメリットでした。

お金の貸し借りと言えば、持ち逃げの可能性もありますよね。無尽は村という狭い地域内で行うお金の貸し借りです。つまり、相手の素性や家も知れていますので、もらい逃げするのもなかなか難しいでしょう。特に昔は現代ほど一人で生きていく手段や安全性もありませんから、貸し手側に今ほどリスクはなかったと思われます。

近代になるにつれ営利目的の無尽を行う会社が増えたため業法が定められた

近代になるにつれ営利目的の無尽を行う会社が増えたため業法が定められました。鎌倉時代から江戸時代を経て昭和あたりまで無尽は地域の社会を支え続けていました。明治時代辺りでは、営利目的の無尽を行う業者が増えだし、詐欺や消費者に不利な契約を迫るなどの問題が目立ち始め、業法が定められたのです。

その業法は無尽業法として、今も法律が残っています。しかし、あくまで会社が無尽を事業として行う場合に守らなければいけない法律とされており、個人間のお金の融通まで縛るものではありません。その証拠に、日本人の生活を支える重要な金融の仕組みとして、法律ができた明治時代から戦後まで無尽は残り続けました。

山梨県以外にも頼母子講・模合という同じ仕組みのものがある

山梨県以外にも頼母子講や模合という同じ仕組みのものがあります。山梨県は住民同士のつながりが特に強いと言われ、無尽の習慣が今も残っています。しかし、山梨以外にも沖縄や奄美大島にも無尽と同じ仕組みが残っており、模合（もあい・むえい）と呼ばれています。ほかに漁村や農村でもまだ残っているとされています。

無尽は別名で無尽講や頼母子、頼母子講とも呼ばれています。無尽というと山梨県がよく注目されますが、現代でも日本の各地に残っている仕組みです。今は昔より豊かな時代ですね。なのでお金を融通というよりは、近所や身内、友人同士でのつながりを大切にするという意味で、食事会や飲み会を開くことが多いようです。

無尽のメリット・デメリットは？

無尽のメリット①会社の残業を断る理由や定時で上がる口実になる

無尽のメリット1つ目は、会社の残業を断る理由や定時で上がる口実になることです。無尽が根付いている地域なら「無尽があるので」というとだったら仕方ないと思ってくれることが一般的だそうです。そのため、会社の飲み会を断ったり、定時で上がるときの角の立たない口実として重宝するという声もあります。

無尽のメリット②人との絆の繋がりを感じられる

無尽のメリット2つ目は人との絆の繋がりを感じられることです。人間関係が面倒さなどで人との絆が薄れがちな現代ですが、気の合う者同士で集まっている無尽なら逆に強い繋がりを得られることがメリットです。若い人の無尽だと積み立てをせず、集まるのが目的となっている一種のコミュニティとしても機能しています。

無尽のデメリット①人間関係のトラブルが起きると面倒

無尽のデメリット1つ目は、人間関係のトラブルが起きると面倒だということです。無尽も人の集まりですので当然、人間関係のトラブルと無縁ではいられません。特にお金を積み立てている場合は、金銭トラブルも起こる可能性がありますし、関係が悪化して無尽の会が崩壊するケースもあるようです。

また、無尽はメンバーの招待があって初めて加入することができます。なぜなら、その新規加入者が信頼できる人かどうかは、人の紹介で判断するしかないからです。そのため、紹介人も当然、責任を負うことを覚悟して招待するのです。金銭が絡む場合はなおさらです。そのため、信頼関係の崩壊もデメリットになるでしょう。

無尽のデメリット②お金の負担が苦しい場合もある

無尽のデメリット2つ目は、お金の負担が苦しい場合もあるということです。無尽の仕組みはそのコミュニティによって違います。例えば従来の無尽だと積み立て金や利息でだんだん苦しくなって、支払えなくなる場合もあります。支払えない場合は、誰かに立て替えてもらうなどして対処する必要があります。

とはいっても、コミュニティによっては積み立て金の仕組み自体がない無尽もあります。無尽は紹介制なので、入るにはメンバーの人に紹介して加入しなければなりません。無尽に入る前にどんな仕組みで回しているのか聞いて検討するのが良いのではないでしょうか。

ちなみに、どんな理由があっても、途中で無尽の会を抜けることはできないと言われています。理由は、基本的にお金が絡むため不公平があってはいけないからです。最低でもメンバーが一周してから、残りの支払いを済ませてから、分割で払うなど、お金をきっちり清算して抜けることが求められます。

無尽は日本人同士が助け合うための仕組み

以上が無尽の意味や、金融としての仕組みでした。私たちは金融と聞くと銀行を思いますが、実は日本の古くから続いている助け合いの仕組みだったのです。明治時代では違法な業者を取り締まるために業法が定められましたが、会社ではなく個人間でやりとりするのは問題ありません。現代では貴重な絆の場として活用されてます。

ほかにも言葉に関する記事や、人間心理、生活に役立つ知識など多数まとめております。どれも興味深いものとなっていますので、ぜひご覧ください。