ありがとう存じますは違和感があるけど実は正しい?使い方や例文の紹介も
感謝を示す敬語に「ありがとう存じます」という表現がありますが、手紙・メール・会話などで見聞きした時に違和感を覚える方は少なくないようです。お嬢様言葉の1つともされますが、そもそも正しい言葉なのか?有難うなどの漢字表記や、返事の際などに使える例文も含めてご紹介していきます。
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目次
ありがとう存じますの意味とは?
「ありがとう」の意味
「ありがとう(有難う)」は日常の中でも使用されることが多いフレーズです。意味は「感謝を表す言葉」であり、「感謝」というのは「有難いと思うこと」や「有難さを感じて謝意を示すこと」を言います。「有難い」は「有ることが難しい」意味で、「有るのが当たり前では無い」ことを表します。「有難う」も同様の意味です。
つまり「ありがとう(有難う)」は、「有ることが当たり前ではない相手の良い行いや気持ちに対する感情」を表す言葉なのです。有難うの感情は言葉で説明するのは難しい部分もあるため、実際に「感謝」と呼ばれる感覚を心に感じることがあって初めて成り立つ意味および言葉とも言えます。
「存じます」の意味
「存じます」は、端的に言えば「思います」の謙譲語です。分解するとなれば「存じ」と「ます」に分けられます。「存じ」は「思う・考える」や「知る・承知」の謙譲語である「存ずる」の連用形です。「ます」は丁寧語の助動詞で、「です」と同様に断定の意味を持ちます。「○○だ・○○だよ・○○よ」などの丁寧表現です。
「ありがとう存じます」は感謝の思いを伝える謙譲語
さて、「ありがとう」と「存じます」それぞれの意味をご紹介した所で「ありがとう存じます」の意味をまとめます。「ありがとう存じます」の意味は、簡単に示すと「感謝の思いを伝える謙譲語」となります。要は、敬語では無い一般的な感謝の表現「ありがとう」の謙譲語が「ありがとう存じます」です。
ありがとう存じますは正しい言葉?
違和感があっても正しい言葉である
まず第一に、「ありがとう存じます」は正しい言葉です。言い慣れていない・言いにくいということもあって「ありがとう存じます」に対して違和感を覚える方は少なくないようですが、謙譲語としての使い方さえ間違えていなければ指摘される理由の無い正しい言葉遣いとされます。
「ありがとう存じました」について
「ありがとう存じました」の「存じました」は「存じます」の変化形ですが、変化したのは「ます」の形です。まず、「ました」は「まし」と「た」に分解することが出来ます。「まし」は「ます」の連用形で、そこに「動作・作用・その結果がある状態で存続する」意味を持つ「た」を組み合わせたのが「ました」です。
「存じました」が表すことは「思うことが存在し続ける」ということになりますが、端的に言ってしまえば「ました」は「既に過ぎたこと・済んだこと・終わったこと」に使用します。そして、「ます」の方は「これからのこと」に対して使うと言われています。
つまり「ありがとう存じました」は「感謝する物事の終わり」に使用し、「ありがとう存じます」は「感謝する物事の節目」に使用する表現です。しかし「ありがとう存じました」は「ありがとう存じます」以上に違和感を覚える方が多いため、「ありがとう存じます」で十分だと言われています。
お嬢様言葉の一部に含まれている表現
「お嬢様や品のある若い女性が使う言葉遣い」を俗に「お嬢様言葉」と呼ぶことがあります。お嬢様言葉に対しては「異様な言葉遣い」といった否定的な意見もありますが、「究極の謙譲語」という肯定的な意見も存在します。確かに、お嬢様言葉は全体的に謙譲語です。「お嬢様言葉の心得は謙譲の姿勢」ということでしょう。
お嬢様言葉には「ありがとう存じます」も存在し、この表現は「丁寧な印象の強い謙譲語」の一種とされています。また、お嬢様言葉では「すみません」や「どうも」は禁句です。
「感謝」を示すなら気持ちや行為の程度を問わず「ありがとう存じます」、「詫びる」意味なら「申し訳ございません」や「恐れ入ります」を使用するのが基本になります。お嬢様言葉のような女性の言葉遣いについて気になる方は、以下の記事もおすすめです。
ありがとう存じますの使い方・例文は?
使い方「手紙やメールなど文語使用が基本」
「ありがとう存じます」は正しい言葉ですが、一般的には「ありがとうございます」が主流となっています。自らが手紙・メールといった文章や口頭で使用する際も、他者が手紙などで使用しているのを見聞きする際も、「ありがとうございます」の方が登場回数が多いでしょう。
「ありがとう存じます」は慣れない人が多いように、「堅め」の印象を与えます。文語(主に手紙などの文章で用いる語)は堅い表現が基本であるため、「ありがとう存じます」は「基本的に手紙やメールなどの文章物に使用した方が良い」と言われています。
会話などの口語(発声で用いる語)では「ありがとうございます」手紙などの文語では「ありがとう存じます」といった使い分けをすると、相手や自分に違和感を与える可能性が低減します。しかし、文章であっても「ありがとう存じます」の存在に違和感を覚える方はいます。ただ、それでも正しい言葉ではあるのです。
使い方「謙譲語の表現であることを忘れずに」
「ありがとう存じます」は正しい言葉なので、たとえ違和感があったり違和感を持たれたりしても使用に際しては全く問題ありません。ただし、口頭にしても手紙やメールなどの文章にしても「謙譲語表現である」ということは忘れないようにして下さい。
敬語の一種である謙譲語は、一般的に「目上の相手に対して自分のことを表す時」に使います。「目上の相手のこと」を表す時には尊敬語、目上の相手に「自分のこと」を表す時には謙譲語を用います。上司は勿論ですが、仕事上では「お客様や取引先」にも使用します。
お嬢様言葉では自分と相手の立場は関係無く全員に対して謙譲語を用いる形となりますが、一般的に敬語を使用する場面である仕事の中でお嬢様言葉と呼ばれる言葉遣いをすることはまずありません。単に敬語を用いるのが一般的ですので、尊敬語・謙譲語・丁寧語といった基本を使い分けるだけで良いと言えます。
使い方「ありがとうを有難うと書くのは?」
「有難う」は確かに「ありがとう」の漢字表記ですが、ビジネスシーンでは平仮名表記にするのが標準とされます。辞書にも「平仮名表記が多い」とあり、ビジネスマナーの研修などでも「有難うでは無く平仮名表記が基本」と言われます。言葉的に間違いではありませんが、印象的に平仮名表記の方が良いと言われているようです。
例文「お返事ありがとう存じます」
「お返事ありがとう存じます」は、その言葉通り「返事をもらった時」に「返事をくれるのは当たり前ではないから感謝しています」という気持ちを込めて使います。また、似た表現に「お返事をありがとう存じます」や「お返事いただきありがとう存じます」があります。
「お返事をありがとうございます」にある「を」は「返事に対する感謝」の「に対する」を表すものですが、あっても無くても表現的には問題ありません。「お返事いただきありがとう存じます」が最も一般的な印象で、この「いただき」は「もらうの謙譲語(いただく)の連用形」です。
例文「ご心配をかけてありがとう存じます」
「ご心配をかけてありがとう存じます」は、「心配をかけてくれたこと」に対する「感謝の気持ち」を表すフレーズです。また、「お世話になりましてありがとう存じます(世話をかけてくれたことに感謝している)」や「ご心配をかけてありがとう存じます(心配りをしてくれたことに感謝している)」という表現もあります。
例文「お越しくださりありがとう存じます」
「お越しくださりありがとう存じます」は、「来てくれたこと」に対して「感謝の気持ち」を表す時に使います。来店してくれたお客様などに使用出来ますが、違和感の問題で一般的にはあまり見聞きしないかもしれません。しかし、正しい表現ではあります。使える時には使ってみると良いでしょう。
ありがとう存じますの類語表現は?
ありがとうございます
「ありがとうございます」の意味は「感謝の気持ちがある」です。「ありがとうございます」は「ありがとう」+「ございます」で成り立ちます。「ございます」は「ある」の丁寧語「ござる」の連用形「ござい」に、丁寧語「ます」を付けた表現です。つまり、敬語の分類では丁寧語に属します。
「存じます」は「思う」や「知る」の謙譲語「存ずる」の連用形「存じ」に丁寧語「ます」を付けた表現なので、敬語の分類では謙譲語になります。「ありがとう」は「伝える側の気持ち」を表す言葉なので、目上の相手に自分のことを表す際に使う謙譲語の方が敬意の意味は強いです。
しかし、一般的には「ありがとうございます」が主流です。それはなぜかと言えば、「見聞きした時にどう思うのか」すなわち「印象」が理由になります。「存じます」は「堅い・響き的に違和感がある・言いにくい」といった印象があるために、違和感なく言いやすい印象の「ありがとうございます」が主流になっているのです。
ありがたく思います
「ありがたく思います」の意味は「感謝の感情がある」で、表現は違いますが「ありがとう存じます」や「ありがとうございます」と表す内容は同じです。ただ、言葉遣いとしての丁寧度に違いがあります。
「思います」は「思う」の連用形「思い」に丁寧語「ます」を付けた表現なので、言葉としては丁寧語と呼ばれる敬語の類になります。「ございます」も丁寧語ですが、丁寧語には「敬意のレベル」があります。「ございます」は「思います」よりも丁寧な印象を与えるとして、「より丁寧な言葉遣い」という扱いになっています。
感謝しています
「感謝しています」の意味は「ありがたいことに対して謝意を示す」です。「当たり前ではない物事にありがとうを示す時に使う」のが「感謝しています」ですが、伝える内容的にはこれまでの「ありがとう存じます」「ありがとうございます」「ありがたく思います」とそう変わりません。
敬語のレベルとしては、「ありがたく思います」くらいに当たります。要は「標準的な丁寧語」です。「感謝しています」では「しています」の部分が丁寧語であり、これは「する」の連用形「し」に接続助詞「て」が付いた表現「して」+「いる」の丁寧語「います」で成り立っています。
「います」を「おります」にして「感謝しております」と表現した場合は、丁重語と呼ばれる言葉遣いになります。丁重語は「自分を低めて聞き手を高める敬語表現」で、謙譲語の一種とされます。丁寧語は「単に失礼がないよう丁寧に表す」敬語なので、敬意を込めてより丁寧に伝えたい場合は「おります」を用いましょう。
ありがとう存じますは違和感のある正しい謙譲語!
違和感があるとして疑問視されることが多い「ありがとう存じます」ですが、言葉遣いとしては指摘の理由が無い正しい表現です。しかし「違和感」といった印象を覚える方が多いために、一般的には「ありがとうございます」が主流化しています。
そして「ありがとう存じます」を使うならば、手紙やメールなどの文章に適すると言われています。お嬢様言葉としては口語でも使うようですが、一般的な敬語表現では文語の使い方を基本にした方が良いとされます。また、ビジネスシーンでは漢字表記「有難う」を避けて平仮名表記を用いるのが標準です。
「ありがとう存じます」は、「日本語における敬語や言葉遣いは相手に与える印象も重視する」ということがよく分かる表現です。違和感があるから「ありがとうございます」だけ使用していれば良いと言えばそうですが、「ありがとう存じます」も正しい日本語表現なので使える時には堂々と使用すれば良いのです。
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