塞翁が馬の読み方と使い方知ってる?故事の由来と意味・中国語原文も
みなさんは、中国の故事が由来となっている「塞翁が馬」という言葉をご存知ですか?「人間万事塞翁が馬」ともいいますが、日常生活の中では殆ど使われないため、使い方や読み方、意味を知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は、由来となった物語や中国語の原文などをご紹介します。参考にしてみてくださいね。
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目次
塞翁が馬の読み方と意味は?
「塞翁が馬」の読み方|さいおうがうま
故事成語であり、ことわざでもある「塞翁が馬」の読み方は、「さいおうがうま」といいます。「塞翁が馬」の「塞翁」とは、中国北方の辺境の塞(とりで)に住んでいた老翁のことです。
「人間万事塞翁が馬」の読み方|にんげんばんじさいおうがうま
「塞翁が馬」は、「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」といい、「じんかんばんじさいおうがうま」という読み方でも表現されます。人間とは「人」ではなく、中国語は「世の中・世間」を指します。
「塞翁が馬」とは|人生の禍福は予測できないという意味
「塞翁が馬」は、人生の禍福は予測できないという意味です。禍福とは、災いと幸せ、不運と幸運のことをいいますが、「何が幸せになるのか」「何が不幸になるのか」ということは予測するのが難しいですよね。
「塞翁が馬」と「人間万事塞翁が馬」は、どちらも「人生の禍福は予測ができない」という意味で用いられます。人間の運命や幸不幸など将来の出来事を前もって推し量ることはできないということです。
「塞翁が馬」は、人間の吉凶や禍福は変転するので、幸不幸のたびに、安易に喜んだり悲しむべきではないという例えですが、何故「塞翁が馬」というのかについては後述しますので、はじめに「塞翁が馬」の使い方と例文を見ていきましょう。
塞翁が馬の使い方と例文
「塞翁が馬」の使い方①スピーチやコメントなどを発言するときに用いる
「塞翁が馬」の使い方1つ目は、「スピーチやコメントなどを発言するときに用いる」ということです。良いことがあった事を相手に伝える時や物事をポジティブに考える時、公の場でスピーチをする時などに使います。
また、これから何かをしようとする時にも、「気持ちを引き締める」という意味で用いられます。ポジティブな意味合いで相手にアドバイスをしたり、励ましの言葉として声をかけたりするときにも使います。
「塞翁が馬」の使い方②戒めの言葉として用いる
「塞翁が馬」の使い方2つ目は、「戒めの言葉として用いる」ということです。未来のことは予測できず、「良いことがあっても悪いことが起こる可能性がある」ということから、「塞翁が馬」はポジティブな表現だけでなく、ネガティブな意味合いでも用いられます。ネガティブ感情を抱いている人の戒めの言葉になるのです。
「塞翁が馬」の使い方③座右の銘として用いる
「塞翁が馬」の使い方3つ目は、「座右の銘として用いる」ことです。「不幸だと思っていたことが幸福に転じることもある。だからポジティブにいこう」という前向きな意味で座右の銘とする場合や、「幸福でも不幸の原因となる場合がある。だから油断せず注意していこう」という意味で座右の銘とする方もいるようです。
日々起こる様々な出来事に対し、一喜一憂したり冷静さを失うほど混乱してしまうのではなく、落ち着いて動じない人生を過ごしていくために、座右の銘とするのもいいかもしれませんね。
「人間万事塞翁が馬」の例文|会話編
会話編の「塞翁が馬」を使った例文です。不運に見舞われ落ち込んでいたものの、「予期せずに良いことがあった時」などに用いることができます。
財布を落として落ち込んでいたけれど、宝くじが当たっていてびっくり。「人間万事塞翁が馬」とは、まさにこのことだね!
「人間万事塞翁が馬」の例文|スピーチ編
次は「人間万事塞翁が馬」という言葉を用いて、公の場でスピーチをするという時にどんな使い方をするのか確認しておきましょう。
まさか私がこのような素晴らしい賞をいただけるなんて思いもしませんでした。まさに「人間万事塞翁が馬」でございます。本日はありがとうございました。
「人間万事塞翁が馬」の例文|ポジティブ・アドバイス編
続いてはポジティブ・アドバイス編です。予期せぬ不運で落ち込んでしまった相手に対し、「前向きな考え方を助言する時」や「励ましの言葉を伝える時」に使います。
良いことと悪いことは繰り返し起こるわけですから、目の前のことに一喜一憂していても仕方がないですよ!「人間万事塞翁が馬」と言うように、今を大切にしていきましょう。
「人間万事塞翁が馬」の例文|ネガティブ・戒め編
最後の例文は、ネガティブ・戒め編です。チャンスを掴み、良いことが続いていたものの、落ち込むような出来事に突然遭遇することってありますよね。そのような時の戒めの言葉として使います。
私、多額の損失が出るほどのミスをして、やっと任されたプロジェクトリーダーを解任されました。「人間万事塞翁が馬」と言うように、油断は禁物ということですよね。
塞翁が馬の故事の由来と意味とは?
「塞翁が馬」の故事の由来|中国・前漢時代の「淮南子」による
「塞翁が馬」の出典は、中国・前漢時代(紀元前202年から紀元8年)の思想書で「淮南子(えなんじ)」という故事です。淮南子は、前漢の高祖(初代皇帝・劉邦)の孫、淮南(わいなん)王の劉安(りゅうあん)が編著した思想書です。
「塞翁が馬」の故事の意味|人生の吉凶は定めがたいという格言
「塞翁が馬」の物語については後述しますが、淮南子の人間訓には、「福が禍となり、禍が福となることは、その変化の全部を知ることはできない。その深さを量り知ることもできない。」と記されています。故に「塞翁が馬」という故事は、「人生の吉凶は定めがたい」という格言であるといえます。
塞翁が馬の原文が収録されている中国の思想書ってどんなもの?
「塞翁が馬」の原文が収録されている「淮南子」は「淮南鴻烈」ともいう
「淮南子」は、劉安が中国の各地から招致した古代中国で活躍した思想家(諸子百家)に命じて書かせた思想書で、諸子百家の思想が広く取り入れられ、「淮南鴻烈(わいなんこうれつ)」ともいわれています。
さて、この時代の日本はというと、中国や朝鮮などの文化の影響によって、稲作や農耕用の石器、金属器などがもたらされた「弥生時代」にあたります。
「塞翁が馬」の原文が収録されている「淮南子」は中国・前漢時代の思想書
「淮南子」は中国・前漢時代の思想書です。「人間万事塞翁が馬」は、全二十一篇ある淮南子の「巻第十八・人間訓(じんかんくん)」に記されています。人間訓は、人生の利害禍福等について述べられている篇です。
「淮南子」の各篇は、原道訓(道を説明したもの)や主術訓(人生の術を述べたもの)、兵略訓(兵を用いる方法を述べたもの)などがあり、「訓」の字をつけて呼ばれます。
- ・第一:原動訓(げんどうくん)
- ・第二:俶真訓(しゅくしんくん)
- ・第三:天文訓(てんもんくん)
- ・第四:地形訓(ちけいくん)
- ・第五:時則訓(じそくくん)
- ・第六:覧冥訓(らんめいくん)
- ・第七:精神訓(せいしんくん)
- ・第八:本経訓(ほんけいくん)
- ・第九:主術訓(しゅじゅつくん)
- ・第十:繆称訓(びゅうしょうくん)
- ・第十一:斉俗訓(せいぞくくん)
- ・第十二:道応訓(どうおうくん)
- ・第十三:氾論訓(はんろんくん)
- ・第十四:詮言訓(せんげんくん)
- ・第十五:兵略訓(へいりゃくくん)
- ・第十六:説山訓(せつざんくん)
- ・第十七:説林訓(せつりんくん)
- ・第十八:人間訓(じんかんくん)
- ・第十九:脩務訓(しゅうむくん)
- ・第二十:泰族訓(たいそうくん)
- ・第二十一:要略(ようりゃく)
淮南子
塞翁が馬の中国語の原文は?
「塞翁が馬」の中国語原文(漢文)|塞翁失马
「塞翁が馬」の中国語原文は「塞翁失马(サイウォンシーマー)」と書き、「sài wēng shī mǎ」と発音します。日本語では、「塞翁が馬」と書きますが、中国語では「塞翁失馬」で(塞翁馬を失う)となります。意味は、日本と同じですが、原文は日本語の表記と異なりますので注意が必要です。
「塞翁が馬」の中国語原文の解釈
それでは、淮南子に記されている「塞翁が馬」原文の現代語訳をご紹介します。【中国の北方に占いの術が巧みな老人(塞翁)がいた。ある日、飼っていたいた馬が逃げて胡(こ)の国へ逃げていった。人は皆、それを哀れに思い塞翁を慰めたが、塞翁は「これが福とならないこともなかろう」といった。
数か月経つと馬が胡の駿馬(しゅんめ・足の速い優れた馬)を連れて帰ってきた。人々は皆、これを喜び祝うと、塞翁が「これが禍とならないこともなかろう」といった。塞翁の家には良馬が多くいた。ある時、騎馬が好きな塞翁の息子が、馬から落ちて足の骨を折ってしまった。
人々はお見舞いに行くと、塞翁は「これが福とならないこともなかろう」といった。一年経つと胡人が塞に攻め入り戦争となった。若者達は弦を引いて戦ったが多くの人が死んだ。塞翁の息子は、足を骨折していたため戦争に行かず命が助かった。】という物語です。幸不幸のたびに一喜一憂するのではなく、冷静でいたいですね。
塞翁が馬の類語は?
「塞翁が馬」の類語①禍福は糾える縄の如し
「塞翁が馬」の類語1つ目は、「禍福は糾える縄の如し」で、読み方は「かふくはあざなえるなわのごとし」となります。「禍と福は、縄を寄り合わせたように交互にやってくる。禍福は表裏一体で、災いが転じて福となったり、福が災いのタネとなったりするものだ」という意味です。
出典は、司馬遷によって編纂された歴史書「史記・南越伝」です。糾えるとは、「糸を寄り合わせる」「縄をなう」ということです。「禍福は糾える縄の如し」の英語は、「Every cloud has a silver lining.(どんな雲にも銀色の裏がある)」となります。
最近、実は悪いことが続いているのですが、「禍福は糾える縄の如し」の言葉を信じて、ポジティブにいこうと思います。
「塞翁が馬」の類語②沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり
「塞翁が馬」の類語2つ目は、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」です。読み方は「しずむせあればうかぶせあり」となります。「人生には苦しくて不遇の時もあれば、全てがうまくいくときもある。悪い事ばかりが続くものではない」ということわざで、不遇な時の慰めの言葉として使われます。
語中に出てくる「瀬」とは、川や海の浅くなっているところや浅瀬などのことをいいますが、古語では、「物事に出会う時」「場所」「機会」という意味で使われていました。
「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」の英語は、「He that falls today may be up again tomorrow.(今日倒れる者が明日は起き上がっているかもしれない)」となります。
離れて暮らしている両親が苦労しているようだ。「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」と言うし、どうにか乗り切ってほしい。
故事成語「塞翁が馬」の意味を知って実際に使ってみよう!
今回は「塞翁が馬」という言葉の読み方や使い方、由来、中国語の原文などをご紹介しました。いかがでしたでしょうか。「塞翁が馬」は、ポジティブにもネガティブな意味合いにも使う言葉ですので、話し手が「どんなニュアンスで発言したのか」という点を理解する必要があります。
「人間万事塞翁が馬」を英語で表すと「Inscrutable are the ways of heaven.(天のやり方は不可解)」となります。「Inscrutable」は「不可解な」という意味です。「塞翁が馬」を覚える時は、日本語の意味や中国語原文、英語をセットで覚えておくといいかもしれませんね。
下記の記事では、故事成語「背水の陣」の意味や由来となった中国の物語、例文・類語等を紹介しています。故事成語には、一つひとつ由来となっている物語があります。どんな物語が言葉の由来となっているのでしょうか。興味をお持ちの方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
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