「伺う」の敬語は?意味や類語は?訪問に行く時の例文13選!謙譲語も
「伺う」は日常でもビジネスシーンでもよく使われる敬語ですが、「聞く」以外にどのような意味を持っているのでしょうか。また、「伺う」の尊敬語や謙譲語はどのような形になるのでしょうか。今回は「伺う」の意味と類語、訪問に行く時の例文などを紹介します。
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目次
「伺う」の意味は?
「伺う」の意味①「聞く」の謙譲語
「伺う」の意味、一つ目は「聞く」の謙譲語です。「お噂はかねてより伺っております」などのように、聞き及んでいる・耳にしているという意味のへりくだった表現になります。注意しなければならないのは、「伺う」は会話の相手を立てる言葉であって、話の内容を自分に伝えた相手に対する敬語ではない点です。
例えば取引先などに「部長の○○より伺っております」のように使うと、いま商談をしている相手よりも自分側の人間である部長を敬うことになってしまうため、適切ではありません。このような場合は、「部長の○○より聞いております」とするか、特に相手を言わず「お話しは伺っております」とするのが良いでしょう。
これが社内での会話だと、また事情が変わります。社長から聞いた事を上司に伝える時は「社長より伺っております」となります。上司から聞いた事を更に上の立場の人に伝える時は、「○○さんより聞いております」とするか、「伺う」を使うべきか判断に迷うようなら相手を特定せずに「お話は伺っております」としましょう。
「伺う」の意味②「尋ねる」の謙譲語
「伺う」の意味、二つ目は「尋ねる」の謙譲語です。こちらは、目上の人に何かを聞く時に「この企画についてご意見を伺いたいのですが」のように使います。もともとは、神仏の託宣を願う時に「伺いを立てる」という形で使われていました。それが転じて、立場が上の人に何かを尋ねる時の敬語として使われるようになりました。
逆に上の立場の人が何かを尋ねたことについて話すときに、「○○様がお伺いになりました」としないように注意しましょう。「伺う」はあくまでも自分を下げる時の言葉なので、尊敬語として使うことはできません。「○○様がお尋ねになりました」のようにしましょう。
「伺う」の意味③「訪問する」の謙譲語
「伺う」の意味、三つ目は「訪問する」の謙譲語です。「すぐに伺います」のように、訪問する相手を敬って、自分側がへりくだる時の言葉です。自分が訪問する場合はもちろん、例えば取引先に上司のみが行く場合でも「○時に△△が伺います」のように使います。
逆に相手の訪問について話す場合に「伺う」は使えませんので、尊敬語のつもりで「お伺いになりました」というのは間違いです。こちらを訪ねてきたときは「いらっしゃいました」、どこかを訪問した場合は「訪問されました」のように使い分けましょう。
「伺う」の敬語は?
「伺う」は尊敬語にはならない
「伺う」は「聞く・尋ねる・訪問する」の謙譲語ですから、「伺う」から尊敬語にはなりません。一旦「聞く・尋ねる・訪問する」に戻してから、それぞれを尊敬語に変える必要があります。聞くの尊敬語は「お聞きになる」、尋ねるの尊敬語は「お尋ねになる」、訪問するの尊敬語は「訪問される・訪問なさる」となります。
尊敬語はないが丁寧語はある「伺います」
「伺う」は尊敬語にはなりませんが、丁寧語にすることは可能です。丁寧語の場合は、「伺います」または「お伺いします」となります。「お伺いします」は丁寧語の「お」と謙譲語の「伺う」で二重敬語だと言われることがありますが、ビジネスシーンでも使われる事が多く、例外的に使っても良い二重敬語となっているようです。
「伺う」の敬語を使った例文13選
「伺う」の敬語を使った例文①訪問する相手に敬意を表した「お伺い」
九条武子夫人は、松契という画号で、私の家にも訪ねて来られ、私もお伺いして絵の稽古をしていられました。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、一つ目は上村松園の「無題抄」からです。ここでの「伺う」は「訪問する」の意味で、語り手が九条武子夫人を敬い自分を下においています。更に「お伺いして」とより丁寧な表現をしています。
「伺う」の敬語を使った例文②手紙から引用した自分宛の「お伺い」
近日ちょっとお伺いしたいのですが、御都合のよい時日を知らせて下さいませんか、云々、といったような手紙だ。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、二つ目は豊島与志雄の「明日」からです。こちらも「訪問する」の意味ですが、例文①のケースと違い、相手側が自分のところへ訪ねてくることについて書いている場面です。
ただし、これは受け取った手紙の文面に書いてある言葉を引用しているので、手紙の差出人が自分を下げ、受取人である筆者を立てている表現のままで問題ありません。
「伺う」の敬語を使った例文③古風な表現の「お伺いしとうございます」
「先生、先生はまず材料だとおっしゃいますが、そのお話はよくわかりました。ではその材料の取り合わせでございますが、そのことについてお伺いしとうございます」 わたしは、このひとは歌人だから、歌の話に寄せて説明すればいいだろうと考えた。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、三つ目は北大路魯山人の「梅にうぐいす」からです。俳句の北大路魯山人は多才な芸術家で、特に美食家として名を馳せていました。この場面では、歌人の女性が料理のことについて、北大路魯山人に教えを請いに来ているようです。従って、この「お伺い」は「尋ねる」の丁寧語になります。
「~しとうございます」は「~したいと思います」の古風な言い回しです。現在ではあまり使う機会は無いかもしれませんが、「お伺いしとうございます」の方が「お伺いしたいと思います」よりもどことなく雅な風情が感じられます。
「伺う」の敬語を使った例文④相手の話を聞くのが主体「お伺いしたい」
「ええ、このごろは私にも、とてもよそよそしくしていました。まあ、どうしたのでしょう。おあがりになりません? いろいろお伺いしたいのですけれど。」
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、四つ目は太宰治の「誰も知らぬ」からです。女学校の友人が駆け落ちをしてしまい、その兄が語り手を訪ねてきた時の会話の一文で、「最近は彼女と距離が出来て詳しく聞いていないから、どのような状況か聞きたい」と言っている場面です。
ここでの「伺う」は、語り手から根掘り葉掘り尋ねるというよりも、友人の兄が語る駆け落ちの経緯を聞くというニュアンスが強いようです。そのため、「尋ねる」と「聞く」の両方の性質を持っていると言えるでしょう。
「伺う」の敬語を使った例文⑤家人が主に尋ねる「お伺い申しますが」
「そこでお伺い申しますが、宇治の牛丸と申す爺(おやじ)、本性は何者でござりましょうや?」 「妖怪変化ではあるまいし、本性などとは無礼であろうぞ。宇治の牛丸と申すのは馬飼吉備彦(うまかいきびひこ)の変名じゃわい」
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、五つ目は国枝史郎の「大鵬のゆくえ」からです。平安時代の貴族、藤原信輔の邸を一人のみすぼらしい老人が訪ねてきます。家人が追い返そうとしても老人はなかなか帰らず、主の信輔も老人を知っている様子で会おうとするので、取り次いだ家人が「あの老人は何者ですか?」と尋ねる場面です。
「申す」にはいくつかの意味がありますが、この場合は「お伺い」の対象への敬意を表します。従って「お伺い申しますが」は「お尋ね致しますが」という意味の主人を敬った言い方になります。
「伺う」の敬語を使った例文⑥神仏のお告げを求める「御伺いを立てる」
「よくお聞きよ。今夜は久しぶりにアグニの神へ、御伺いを立てるんだからね、そのつもりでいるんだよ」
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、六つ目は芥川龍之介の「アグニの神」からです。これは占いをするというインド人の老婆のセリフで、自分がさらってきて働かせている少女に向けて言ったものです。この老婆は客から依頼を受けると、魔術を使ってアグニ神を少女に乗り移らせ、依頼内容についてのお告げをきくのです。
つまり、ここでの「御伺いを立てる」とは「神仏に祈ってお告げを聞く」という意味で、人間よりも上の存在であるアグニの神を敬った表現になります。
「伺う」の敬語を使った例文⑦目上の者の指示を仰ぐ「伺いを立てる」
目下の者が目上の者の意見や指図を求める。 「上司に伺いを立てる」
引用元: Weblio
「伺う」の敬語を使った例文、七つ目は三省堂の「大辞林」からです。一つ上の例文で取り上げたのと同じ「伺いを立てる」ですが、こちらは神仏ではなく自分より目上の立場の人間が対象になります。
この場合の「伺う」は行動だけ見ると「尋ねる」と同じですが、単純に分からない事を質問するというよりも、立場が上の者の意向を探る・指示を待つといった意味合いが強い言葉です。
「伺う」の敬語を使った例文⑧地位が高い人の判断を仰ぐ「お伺い」
襖子(からかみ)をあけて朝餉(あさがれい)の間(ま)に女院は出ておいでになった。絵の鑑識に必ず自信がおありになるのであろうと思って、源氏はそれさえありがたく思われた。判者が断定のしきれないような時に、お伺いを女院へするのに対して、短いお言葉の下されるのも感じのよいことであった。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、八つ目は與謝野晶子訳の「源氏物語・絵合」からです。七つ目の例文と同じ「目上の者の意向を探る」という意味ですが、こちらは「お伺い」という名詞に集約されています。
「伺う」の敬語を使った例文⑨質問に対する答えとして「伺いません」
「随分ありますが、わたくし共の方の怪談にはどうもほんとうの怪談が少なくって、しまいへ行くとだんだんに種の割れるのが多くって困りますよ。あなたにはまだ津の国屋のお話はしませんでしたっけね」 「いいえ、伺いません。怪談ですか」 「怪談です」と、老人はまじめにうなずいた。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、九つ目は岡本綺堂の「半七捕物帳・津の国屋」からです。半七捕物帳は新聞記者の「わたし」が半七老人の元を訪れ、岡っ引き時代の様々な体験談を聞かせてもらうという形になっています。
ここでの「伺う」は「聞く」の謙譲語で、半七老人から「津の国屋の話はしましたっけ」と問いかけられ「いいえ、お聞きしておりません」と答えている場面です。
「伺う」の敬語を使った例文⑩尋ねにやって来た「お伺いに出まして」
いかようにいたして差し上げましょうやら、右、女どももやっぱり田舎いなかもののことでございますで、よくお言がのみ込めかねます。ゆえに失礼ではございますが、ちょいとお伺いに出ましてございますが。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、十個目は泉鏡花の「眉かくしの霊」からです。飛び込みで泊まった宿の待遇が良く、食事も気に入ったので「これをこのようにして食べたいから、追加で持って来てくれ」と頼んだところ、料理番が「どのような食べ方かよく分からないので」と確認に来たところです。
ここで使われている「伺う」の意味は「尋ねる」になりますが、一階の調理場から三階の客間までわざわざ尋ねにやって来ているので、「お伺いに出ました」という表現は「尋ねる」と「訪問する」の両方の意味を持つことになります。
「伺う」の敬語を使った例文⑪質問に答えてもらう「伺いたい」
食べかけていた弁当箱をおしやると、菱苅は登山口になっている土合(どあい)駅の駅長に電話をかけた。 「お忙しいところ、申しわけないのですが、だいたいの状況を伺いたいと思いまして……遭難前後に、雨が降りましたでしょうか」
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、十一個目は久生十蘭の「一の倉沢」からです。息子が谷川岳で遭難したと知り、登山口にある駅に当時の気候を確認している場面です。この「伺う」は「尋ねる」の意味ですが、今までの例文に出て来た「尋ねる」よりも更に「あれこれ質問して聞き出す」という意味が強い使い方です。
「伺う」の敬語を使った例文⑫挨拶代わりの「伺いますが」
会所の前に佇たたずんだ二人の影がある。どっちも、露除つゆよけの笠に素草鞋すわらじ、合羽かっぱの裾すそから一本落しの鐺こじりをのぞかせ、及び腰で戸をコツコツとやりながら、 「ええ、ちょっとものを伺いますが……」 「誰だい」と、すぐ内から返辞があった。 「ありがてえ、起きていますぜ」
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、十二個目は吉川英治の「鳴門秘帖・上方の巻」からです。江戸時代には、町会や商業組合などの事務所として、また集会所や取引所として使われていた建物を会所と呼んでいました。その会所を訪ねてきた人物と会所守との会話です。
ここでの「伺う」は「訪ねる」と「尋ねる」両方の意味を持つだけでなく、「ごめんください」のような挨拶としての使われ方もしています。
「伺う」の敬語を使った例文⑬耳寄りな情報という意味での「伺いました」
「それはうちへおよこしよ。うちにいれば二三年中うちには、きっと仙人にして見せるから。」 「左様(さよう)ですか? それは善い事を伺いました。では何分願います。どうも仙人と御医者様とは、どこか縁が近いような心もちが致して居りましたよ。」 何も知らない番頭は、しきりに御時宜(おじぎ)を重ねながら、大喜びで帰りました。
引用元: 青空文庫
「伺う」の敬語を使った例文、十三個目は芥川龍之介の「仙人」からです。仙人になりたいという男に困っていた番頭が、引取先を見つけて安心する場面です。ここでの「伺う」は「聞く」の意味になりますが、単に「耳にする」というのではなく、「良い話を教えてもらった」というニュアンスで使われています。
「伺う」の類語は?
「伺う」の類語①拝聴する
「伺う」の類語、一つ目は「拝聴する」です。「聞く」の謙譲語の一つで、謹んで聞く・ありがたく聞くという意味です。日常生活ではあまり使う機会のない言葉ですが、演奏や講演を聞いたことを本人に伝えるときや、目上の人の意見や取引先がプレゼンした内容について触れるときに使えるので、覚えておくと便利な類語です。
「伺う」の類語②お邪魔する
「伺う」の類語、二つ目は「お邪魔する」です。「訪問する」の謙譲語の一つで、相手の仕事や都合を邪魔することを詫びる意味合いがあります。ビジネスシーンにはあまり向いていない類語ですが、日常生活ではむしろ「伺う」より「お邪魔する」を使う機会の方が多いかもしれません。
「伺う」の類語③お尋ねする
「伺う」の類語、三つ目は「お尋ねする」です。「尋ねる」の丁寧語で、相手に何かを聞くときの前置きとして使われます。「すみません」などの挨拶のあと、いきなり「○○ですか?」と切り出すよりも、「少々お尋ねしますが」とワンクッションおくことで、印象を柔らげる効果があります。
ただし、「お尋ねする」は丁寧語で「伺う」は謙譲語ですので、ビジネスシーンでは「伺いますが」や「お伺いしますが」の方が適切です。また「伺う」の類語は他にもいろいろありますので、ビジネス用・日常用にいくつか覚えておくとよいでしょう。
「お尋ねする」は丁寧語で「伺う」は謙譲語ですので、ビジネスシーンでは「伺いますが」や「お伺いしますが」の方が適切です。
「伺う」の謙譲語は?
「伺う」よりへりくだる言葉は無い
そもそも「伺う」という言葉自体が「聞く・尋ねる・訪問する」の謙譲語です。そのため、「伺う」よりへりくだる言葉は存在しません。「伺います」や「お伺いしたい」などで十分です。
二重敬語「お伺いさせて頂きます」は使わない
「お伺いさせて頂きます」は最もへりくだった表現に思えますが、「伺う」という謙譲語と「させて頂く」という謙譲語が重なった二重敬語となり文法的に間違いです。また言葉としてもくどい印象を与えますので、「お伺いさせて頂きます」は使わないように注意しましょう。
「伺う」のそれぞれの意味や用法・尊敬語との違いを覚えて活用しましょう!
「伺う」には「聞く・尋ねる・訪問する」の三種類の意味があり、それぞれ使う場面が異なります。また、敬意の対象を間違えると相手に対して失礼になりますので注意しましょう。「伺う」だけでなく類語もいくつか覚えておくと、使える表現の幅が広がって便利ですよ!それぞれの言葉の使い方を正しく覚えて活用しましょう。
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